名倉 利信
神戸大学理学部数学科
解析数理講座 助手
教育研究分野
E-mail: Tel: 078-803-5607

どんな事を研究して来たか:

極小部分多様体というものに興味を持ち、 それらの持ついくつかの性質について調べて来ました。 極小部分多様体というのは、 ある "空間" に含まれるもののうち体積(面積)の大きさが、 他のもののそれと比較して特異性を 持つものを言います。たとえば、 我々の住む空間で考えると、針金で閉じた枠をつくり、 それを石鹸水の はいったバケツに入れてから、 出した時にできる石鹸膜 などがその例です。

極小部分多様体に対して、ヤコビ作用素と呼ばれるものが得られ、 これの固有値とその固有値の重複度とを組にしたもの全体を、 ヤコビ作用素のスペクトルと言います。このスペクトルのうち、 0 の固有値のところと、負の 固有値のところが重要です。 0 の固有値の重複度を退化次数と言い、 負の固有値の重複度のすべての和を指標と言います。

私は、ある "空間" が球面であり、極小部分多様体が対称空間と呼ばれるもので、 さらに運動群が両者に "可換" に働いている場合を考えました。 この状況下では、群の表現論というものが使えます。対称空間とは、 球面や射影空間などを例として含んでいるある空間です。 球面が、 より高次元の球面の極小部分多様体である場合に、 退化次数や指標の一つの下限を得ました。特に、 極小部分多様体が二次元の球面のときには、退化次数を求めることができました。


これから、どんな事をしたいか:

上であげた例である、 石鹸幕の時は極小部分多様体は必ずありました。私は、もう少し一般的な場合に、 極小部分多様体の存在を規制する条件をいろいろ調べてみたいと思っています。 しかし、この問題は私にとって非常に難しい問題なので、 結果を出すまでにはいたっていません。そこで、調和写像と言うものについて、 その存在を規制する条件を調べてみようと思っています。なぜかと言いますと、 この調和写像と言うのは、極小部分多様体より一般的なものであり、 それを調べる道具立ても極小部分多様体の場合よりも一応揃っているからです。