渡邉 清
神戸大学理学部数学科
応用数理講座 准教授
組み合わせ数理教育研究分野
E-mail: watanabe@math.kobe-u.ac.jp Tel: 078-803-5605

研究テーマ:

多変数複素解析関数、保型形式、複素力学系

今から二千年以上前の古代ギリシャや一千年程前のアラビアの文献に、与えられた自然数nが有理数辺の直角三角形の面積となるかどうかを問う問題がありました。そうなるnを合同数と言います。例えば、6は三千年以上前から知られている3、4、5の長さを持つ直角三角形の面積なので合同数です。では、1や2はどうでしょうか?1も2も残念ながら合同数ではありません。このことは、三百五十年程前にFermatにより示されました。この様に簡単に思える問題ですが、完全に解決するのは大変難しい問題であることが分かります。そして、二十年程前、数学の最先端の理論を使って、ようやくほぼ解けそうになりました。この問題は、最近解決したFermatの最終定理とも関係があります。 私たちの研究室では、上のような問題と関係して、楕円曲線や保型形式の勉強をしています。ある自然数nが合同数であることと楕円曲線E:y^2=x^3-n^2xが無限個の有理点を持つことが同じことであることが分かります。そしてその事は、楕円曲線EのHasse-WeilのL関数の特殊値L(E,1)が零になるかどうかと関係します。ここに、まだ解かれていないBSD予想があります。そして、合同数問題の解決に、志村による半整数重みの保型形式の理論がその発展であるWaldspurgerの仕事と共にTunnellにより使われました。ここでは、ArtinのL関数とHasse-WeilのL関数とが関係します。これらの現象の低音部には正方形の対称性が流れています。楕円関数の周期としての正方格子やGalois群=二面体群等々として。このことは、Gaussに源をはっします。 以上の事柄と関連して、関数の変数を複素数にした複素解析関数、 特に、変数の数をたくさんにした多変数複素解析関数にも興味を持っています。 また、Riemann面のWeierstrass点や複素力学系と呼ばれる分野の 簡単な関数を何度も合成してできるフラクタルという不思議な図形にも興味があります。


私たちの研究室には現在、修士2年1人,修士1年1人 、 学部4年4人の計6人が、所属しています。そして、 以下のようなことを勉強しています。

修士2年: 保型形式

修士1年: 楕円曲線論

学部4年: 数論、特に、二次形式

なお、過去には五十名程の卒業生が居り、高校教員、中学教員、 SE等として社会で活躍しています。現在は、アフリカの中学で数学教員をしている人もいます。

以下に、関連する論文を上げておきます。

  1. Kiyoshi WATANABE ; Weierstrass points of the Fermat curve, Proceedings of the First Congress ISAAC'97, Recent Developments in Complex Analysis and Computer Algebra (1999), Kluwer Academic Publishers, 331-343.
  2. Kiyoshi WATANABE ; Cousin problem and holomorphic cocycles, Mathematica Japonica, Vol.48, No.2, 1998, 217-221.
  3. Kiyoshi WATANABE ; A note on weights of Weierstrass points, Mathematics Journal of Toyama University, Vol.21, 1998, 117-120.