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Annotation of OpenXM/doc/genkou19991125.tex, Revision 1.74

1.1       tam         1: \documentclass{jarticle}
                      2:
1.74    ! tam         3: %% $OpenXM: OpenXM/doc/genkou19991125.tex,v 1.73 1999/12/24 15:42:24 ohara Exp $
1.51      ohara       4:
1.52      tam         5: \usepackage{jssac}
1.68      ohara       6: \title{
                      7: 1. 意味もない修飾過剰な語句は排除しましょう。\\
1.73      ohara       8: 3. せっかく fill しているのをいじらないでくれ。\\
                      9: 4. 田村が遊んでばかりでおればかり仕事をしているのはどう考えても不公平だ。
                     10: なんで仕事をしないのか、いい加減仕事をしろ、田村。
1.74    ! tam        11: %↑すみません、家で御飯食べてました。
1.68      ohara      12: }
1.52      tam        13:
1.67      tam        14: \author{奥 谷 　 行 央\affil{神戸大学大学院自然科学研究科}
                     15:                \mail{okutani@math.sci.kobe-u.ac.jp}
                     16:   \and 小 原 　 功 任\affil{金沢大学理学部}
1.53      tam        17:                \mail{ohara@kappa.s.kanazawa-u.ac.jp}
1.67      tam        18:   \and 高 山 　 信 毅\affil{神戸大学理学部}
1.53      tam        19:                \mail{takayama@math.sci.kobe-u.ac.jp}
1.67      tam        20:   \and 田 村 　 恭 士\affil{神戸大学大学院自然科学研究科}
1.52      tam        21:                \mail{tamura@math.sci.kobe-u.ac.jp}
1.67      tam        22:   \and 野 呂 　 正 行\affil{富士通研究所}
                     23:                \mail{noro@para.flab.fujitsu.co.jp}
                     24:   \and 前 川 　 将 秀\affil{神戸大学理学部}
                     25:                \mail{maekawa@math.sci.kobe-u.ac.jp}
1.1       tam        26: }
1.74    ! tam        27: \art{}
1.1       tam        28:
                     29: \begin{document}
                     30: \maketitle
                     31:
1.30      ohara      32: \section{OpenXMとは}
                     33:
1.43      tam        34: OpenXM は数学プロセス間でメッセージを交換するための規約である。
                     35: 数学プロセス間でメッセージをやりとりすることにより、
                     36: ある数学プロセスから他の数学プロセスを呼び出して計算を行なったり、
                     37: 他のマシンで計算を行なわせたりすることが目的である。
                     38: なお、 OpenXM とは Open message eXchange protocol for Mathematics の略である。
                     39: OpenXM の開発の発端は野呂と高山により、
                     40: asir と kan/sm1 を相互に呼び出す機能を実装したことである。
1.31      tam        41:
1.65      tam        42: 初期の実装では、相手側のローカル言語の文法に従った文字列を送っていた。
                     43: この方法では相手側のソフトが asir なのか kan/sm1 なのかを判別するなどして、
                     44: 相手側のローカル言語の文法に合わせた文字列を作成しなければならない。
                     45: このローカル言語の文法に従った文字列を送る方法は、
                     46: 効率的であるとはいい難いが、使いやすいとも言える。
                     47:
                     48: 現在の OpenXM 規約では共通表現形式によるメッセージを用いている。
                     49: 上記の文字列を送る方法の利点を生かすため、
                     50: OpenXM 規約では共通表現形式の中の文字列として、
                     51: ローカル言語の文法に従った文字列を用いたメッセージの交換も可能となっている。
1.50      ohara      52:
1.63      tam        53: OpenXM 規約では通信の方法に幾らかの自由度があるが、
                     54: 現在のところは TCP/IP を用いた通信しか実装されていない。
1.65      tam        55: そこで、この論文では具体的な実装は TCP/IP を用いていると仮定する。
1.30      ohara      56:
1.36      tam        57: \section{OpenXM のメッセージの構造}
1.30      ohara      58:
1.61      tam        59: 通信の方法によってメッセージの構造は変わる。
1.65      tam        60: 前節で仮定したとおり、この論文では TCP/IP の場合についてのみ説明を行なう。
1.61      tam        61:
                     62: OpenXM 規約で規定されているメッセージはバイトストリームとなっており、
                     63: 次のような構造になっている。
1.30      ohara      64:
1.50      ohara      65: \begin{tabular}{|c|c|}
                     66: \hline
                     67: ヘッダ & \hspace{10mm} ボディ \hspace{10mm} \\
                     68: \hline
1.36      tam        69: \end{tabular}
                     70:
                     71: ヘッダの長さは 8 バイトであると定められている。
                     72: ボディの長さはメッセージごとに異なっているが、
1.40      tam        73: 長さは $0$ でもよい。
1.38      tam        74:
1.36      tam        75: ヘッダは次の二つの情報を持っている。
1.30      ohara      76: \begin{enumerate}
1.43      tam        77: \item  前半の 4 バイト。メッセージの種類を表わす識別子であり、
1.36      tam        78:        タグと呼ばれる。
1.43      tam        79: \item  後半の 4 バイト。メッセージにつけられた通し番号である。
1.30      ohara      80: \end{enumerate}
1.36      tam        81: それぞれの 4 バイトは 32 ビット整数とみなされて扱われる。
1.61      tam        82: この場合に用いられる整数の表現方法については後述するが、
1.36      tam        83: 基本的に表現方法はいくつかの選択肢から選ぶことが可能となっており、
                     84: またその選択は通信路の確立時に一度だけなされることに注意しなければならない。
1.50      ohara      85: 現在のOpenXM 規約では、タグ(整数値)として
                     86: 以下のものが定義されている。
1.45      tam        87:
                     88: \begin{verbatim}
1.53      tam        89: #define        OX_COMMAND              513
                     90: #define        OX_DATA                 514
1.54      tam        91: #define OX_SYNC_BALL            515
1.53      tam        92: #define OX_DATA_WITH_LENGTH     521
                     93: #define OX_DATA_OPENMATH_XML    523
                     94: #define OX_DATA_OPENMATH_BINARY 524
                     95: #define OX_DATA_MP              525
1.45      tam        96: \end{verbatim}
1.30      ohara      97:
1.50      ohara      98: ボディの構造はメッセージの種類によって異なる。
1.69      tam        99: タグが OX\_COMMAND となっているメッセージはスタックマシンへの命令であり、
                    100: それ以外のメッセージは何らかのオブジェクトを表している。
                    101: この論文では OX\_DATA と OX\_COMMAND で識別される
                    102: メッセージについてのみ、説明する。
1.50      ohara     103:
                    104: 既存のメッセージでは対応できない場合は、新しい識別子を定義することで新し
                    105: い種類のメッセージを作成することができる。この方法は各数学ソフトウェアの
                    106: 固有の表現を含むメッセージを作成したい場合などに有効である。新しい識別子
                    107: の定義方法については、\cite{OpenXM-1999} を参照すること。
1.42      tam       108:
                    109: \section{OpenXM の計算モデル}
                    110:
1.50      ohara     111: OpenXM 規約での計算とはメッセージを交換することである。また、 OpenXM 規
                    112: 約ではクライアント・サーバモデルを採用しているので、メッセージの交換はサー
                    113: バとクライアントの間で行なわれる。クライアントからサーバへメッセージを送
                    114: り、クライアントがサーバからメッセージを受け取ることによって計算の結果が
1.70      ohara     115: 得られる。このメッセージのやりとりはクライアントの主導で行われる。つまり、
                    116: クライアントは自由にメッセージをサーバに送付してもよいが、サーバからは自
                    117: 発的にメッセージが送付されることはない。この原理はサーバはスタックマシン
1.73      ohara     118: であることで実現される。スタックマシンの構造については \ref{sec:oxsm} 節
                    119: で述べる。
1.70      ohara     120:
                    121: サーバがクライアントから受け取ったオブジェクト(つまり OX\_COMMAND でない
                    122: メッセージのボディ)はすべてスタックに積まれる。スタックマシンへの命令
                    123: (OX\_COMMAND で識別されるメッセージのボディ)を受け取ったサーバは命令に対
                    124: 応する動作を行なう。このとき、命令によってはスタックからオブジェクトを取
                    125: り出すことがあり、また(各数学システムでの)計算結果をスタックに積むことが
                    126: ある。もし、与えられたデータが正しくないなどの理由でエラーが生じた場合に
                    127: はサーバはエラーオブジェクトをスタックに積む。計算結果をクライアントが得
                    128: る場合にはスタックマシンの命令 SM\_popCMO または SM\_popString をサーバ
                    129: に送らなければならない。これらの命令を受け取ってはじめて、サーバからクラ
                    130: イアントへメッセージが送られる。
1.50      ohara     131:
1.70      ohara     132: {\Huge 以下、書き直し}
1.50      ohara     133:
1.70      ohara     134: まとめると、クライアントがサーバへメッセージを送り、
1.74    ! tam       135: 計算の結果を得るという手順は以下のようになる。
1.3       tam       136:
                    137: \begin{enumerate}
1.70      ohara     138: \item
                    139: まず、クライアントがサーバへオブジェクトを送る。サーバは送られてきたオブ
                    140: ジェクトをスタックに積む。
                    141: \item
                    142: クライアントがサーバに命令を送ると、サーバは必要なだけスタックからデータ
                    143: を取り出し、実行した結果をスタックに積む。
1.74    ! tam       144: %って書いてるけど、命令がSM\_popCMO とか SM\_shutdown の場合は?
1.70      ohara     145: \item
1.74    ! tam       146: 最後に SM\_popCMO もしくは SM\_popString をサーバへ送ると、
        !           147: サーバはスタックから計算結果の入っているデータを取り出し、
        !           148: クライアントへ送出する。
1.4       tam       149: \end{enumerate}
1.2       tam       150:
1.73      ohara     151: \section{OpenXM スタックマシン}\label{sec:oxsm}
1.68      ohara     152:
                    153: OpenXM 規約ではサーバはスタックマシンであると定義している。以下、OpenXM
                    154: スタックマシンと呼ぶ。この節ではOpenXM スタックマシンの構造について説明
                    155: しよう。
                    156:
1.70      ohara     157: まず、OpenXM 規約は通信時にやりとりされる共通のデータ形式については規定
                    158: するが、OpenXM スタックマシンがスタックに積む、オブジェクトの構造までは
                    159: 規定しない。つまり、オブジェクトの構造は各数学システムごとに異なっている
                    160: ということである。このことは通信路からデータを受け取った際に、各数学シス
                    161: テムが固有のデータ構造に変換してからスタックに積むことを意味する。この変
                    162: 換は1対1対応である必要はない。
1.68      ohara     163:
                    164: 次に OpenXM スタックマシンの命令コードについて説明する。OpenXM スタック
                    165: マシンにおけるすべての命令は4バイトの長さを持つ。OpenXM 規約の他の規定と
                    166: 同様に、4バイトのデータは32ビット整数と見なされるので、この論文でもその
                    167: 表記にしたがう。OpenXM スタックマシンに対する命令はスタックに積まれるこ
                    168: とはない。現在のところ、OpenXM 規約では以下の命令が定義されている。
                    169:
                    170: \begin{verbatim}
1.69      tam       171: #define SM_popSerializedLocalObject               258
                    172: #define SM_popCMO                                 262
                    173: #define SM_popString                              263
                    174:
                    175: #define SM_mathcap                                264
                    176: #define SM_pops                                   265
                    177: #define SM_setName                                266
                    178: #define SM_evalName                               267
                    179: #define SM_executeStringByLocalParser             268
                    180: #define SM_executeFunction                        269
                    181: #define SM_beginBlock                             270
                    182: #define SM_endBlock                               271
                    183: #define SM_shutdown                               272
                    184: #define SM_setMathCap                             273
                    185: #define SM_executeStringByLocalParserInBatchMode  274
                    186: #define SM_getsp                                  275
                    187: #define SM_dupErrors                              276
                    188:
                    189: #define SM_DUMMY_sendcmo                          280
                    190: #define SM_sync_ball                              281
                    191:
                    192: #define SM_control_kill                          1024
                    193: #define SM_control_to_debug_mode                 1025
                    194: #define SM_control_exit_debug_mode               1026
                    195: #define SM_control_ping                          1027
                    196: #define SM_control_start_watch_thread            1028
                    197: #define SM_control_stop_watch_thread             1029
                    198: #define SM_control_reset_connection              1030
1.68      ohara     199: \end{verbatim}
                    200:
1.74    ! tam       201: スタックマシンは命令の実行の結果がある場合、
        !           202:
        !           203: 結果をスタックに積む。
        !           204: これは、たとえエラーが起こったとしても同じであり、
        !           205: この場合はエラーオブジェクトをスタックに積む。
        !           206:
        !           207: %以下、どういうときに結果をスタックに積むかエラーの場合どうするかの説明が
        !           208: %必要であろう。
1.1       tam       209:
1.72      tam       210:
1.73      ohara     211: \section{CMO のデータ構造}\label{sec:cmo}
1.4       tam       212:
1.68      ohara     213: OpenXM 規約では、数学的オブジェクトを表現する方法として CMO 形式(Common
                    214: Mathematical Object format)を定義している。この CMO 形式にしたがったデー
                    215: タは、識別子が OX\_DATA であるようなメッセージのボディになることを想定し
                    216: ている。
                    217:
1.72      tam       218: CMO 形式におけるデータ構造は次のような構造をもつ。
                    219:
                    220: \begin{tabular}{|c|c|} \hline
                    221: ヘッダ        & \hspace{10mm} ボディ \hspace{10mm} \\ \hline
                    222: \end{tabular}
1.71      tam       223:
1.73      ohara     224: ヘッダは4バイトである。ボディの長さはそれぞれのデータによって異なるが、
                    225: 0でもよい。
1.68      ohara     226:
1.73      ohara     227: メッセージと同様にヘッダは4バイト単位に管理される。すなわち、CMO ではヘッ
                    228: ダは一つだけの情報を含む。この4バイトのヘッダのことをタグともいう。さて、
                    229: CMO では、タグによってボディの論理的構造が決定する。すなわち、タグはそれ
                    230: ぞれのデータ構造と1対1に対応する識別子である。それぞれの論理的構造は
                    231: \cite{OpenXM-1999} に詳述されている。現在の OpenXM 規約では以下の CMO が
                    232: 定義されている。
1.30      ohara     233:
1.47      tam       234: \begin{verbatim}
1.74    ! tam       235: #define CMO_ERROR2  0x7f000002
        !           236: #define CMO_NULL    1
        !           237: #define CMO_INT32   2
        !           238: #define CMO_DATUM   3
        !           239: #define CMO_STRING  4
1.73      ohara     240: #define CMO_MATHCAP 5
                    241:
1.74    ! tam       242: #define CMO_START_SIGNATURE      0x7fabcd03
        !           243: #define CMO_ARRAY                16
        !           244: #define CMO_LIST                 17
        !           245: #define CMO_ATOM                 18
        !           246: #define CMO_MONOMIAL32           19
        !           247: #define CMO_ZZ                   20
        !           248: #define CMO_QQ                   21
        !           249: #define CMO_ZERO                 22
        !           250: #define CMO_DMS_GENERIC          24
        !           251: #define CMO_DMS_OF_N_VARIABLES   25
        !           252: #define CMO_RING_BY_NAME         26
        !           253: #define CMO_RECURSIVE_POLYNOMIAL 27
        !           254: #define CMO_LIST_R               28
        !           255:
        !           256: #define CMO_INT32COEFF                 30
        !           257: #define CMO_DISTRIBUTED_POLYNOMIAL     31
        !           258: #define CMO_POLYNOMIAL_IN_ONE_VARIABLE 33
        !           259: #define CMO_RATIONAL                   34
        !           260:
        !           261: #define CMO_64BIT_MACHINE_DOUBLE           40
        !           262: #define CMO_ARRAY_OF_64BIT_MACHINE_DOUBLE  41
        !           263: #define CMO_128BIT_MACHINE_DOUBLE          42
        !           264: #define CMO_ARRAY_OF_128BIT_MACHINE_DOUBLE 43
        !           265:
        !           266: #define CMO_BIGFLOAT          50
        !           267: #define CMO_IEEE_DOUBLE_FLOAT 51
        !           268:
        !           269: #define CMO_INDETERMINATE 60
        !           270: #define CMO_TREE          61
        !           271: #define CMO_LAMBDA        62
1.47      tam       272: \end{verbatim}
1.72      tam       273:
1.73      ohara     274: この中で CMO\_INT32, ... で識別されるオブジェクトは最も基本的なオブジェ
                    275: クトであって、すべての OpenXM 対応システムに実装されていなければならない。
1.48      tam       276:
1.73      ohara     277: これらについての解説を行う前に記法について、少し説明しておく。
                    278: この論文では、大文字で CMO\_INT32 と書いた場合には、上記で定義した識別子
                    279: を表わす。また CMO\_INT32 で識別されるオブジェクトのクラス(あるいはデー
                    280: タ構造)を cmo\_int32 と小文字で表わすことにする。
                    281:
                    282: さて cmo を表現するための一つの記法を導入する。この記法は CMO expression
                    283: と呼ばれている。その正確な形式的定義は \cite{OpenXM-1999} を参照すること。
                    284:
                    285: まず CMO expssion は Lisp 風表現の一種で、 cmo を括弧で囲んだリストとし
                    286: て表現する。それぞれの要素はカンマで区切る。
                    287: 例えば、
                    288: \begin{quote}
                    289: (17, {\sl int32}, (CMO\_NULL), (2, {\sl int32} $n$))
                    290: \end{quote}
                    291: は CMO expression である。ここで、小文字の斜体で表された``{\sl int32}''
                    292: は 4バイトの任意のデータを表す記号であり、``{\sl int32} $n$'' は同じく 4
                    293: バイトのデータであるが以下の説明で $n$ と表すことを示す。また数字 17, 2
                    294: などは 4バイトのデータで整数値としてみたときの値を意味する。CMO\_NULL は
                    295: 識別子(すなわち数字 1 と等価)である。この記法から上記のデータは 20 バイ
                    296: トの大きさのデータであることが分かる。
                    297:
                    298: さて、この記法のもとで cmo\_int32 を次のデータ構造を持つと定義する。
                    299: \begin{quote}
                    300: cmo\_int32 := (CMO\_INT32,  {\sl int32})
                    301: \end{quote}
                    302:
1.74    ! tam       303: {\Huge 同様に cmo\_string, cmo\_list などを定義}
        !           304:
        !           305: cmo\_string := (CMO\_STRING, {\sl int32}, string)
        !           306:
        !           307: cmo\_list := (CMO\_LIST, {\sl int32},...
1.73      ohara     308:
                    309: % ここで 32 bit の整数の表現方法について触れておく。
                    310: % OpenXM 規約ではバイトストリームで 32 bit の整数 20 を
                    311: % {\tt 00 00 00 14} と表す方法と {\tt 14 00 00 00} と表す方法がある。
                    312: % この表現方法の違いはクライアントとサーバの最初の接続時に
                    313: % 双方の合意で決定することになっている。
                    314: % なお、合意がない場合には前者の表現方法
                    315: % (以後、この表現方法をネットワークバイトオーダーと呼ぶ)を
                    316: % 使うことになっている。
                    317: % また、負の数を表現する必要があるときには、
                    318: % 2 の補数表現を使うことになっている。
                    319:
                    320: % 先ほどの、 (CMO\_INT32, 123456789) をネットワークバイトオーダーで
                    321: % バイト列に直すと、
                    322: % \begin{center}
                    323: %      {\tt 00 00 00 02 07 5b cd 15}
                    324: % \end{center}
                    325: % となり、
                    326: % (CMO\_STRING, 6, ``OpenXM'') は
                    327: % \begin{center}
                    328: %      {\tt 00 00 00 04 00 00 00 06 4f 70 65 6e 58 4d}
                    329: % \end{center}
                    330: % となる。
                    331:
                    332: % CMO 形式の多倍長整数は、 Gnu MPライブラリ等を参考にしており、
                    333: % 符号付き絶対値表現を用いている。
                    334: % タグ以降の形式は次のようになる。
                    335:
                    336: % \begin{tabular}{|c|c|c|c|c|} \hline
                    337: % $f$ & $b_0$ & $b_1$ & $\cdots$ & $b_{n-1}$ \\ \hline
                    338: % \end{tabular}
                    339:
                    340: % ここで、 1 つの枠は 4 バイトを表し、
                    341: % $f$ は符号付き 32 ビット整数を、
                    342: % $b_0$, $b_1$, $\cdots$, $b_{n-1}$ は符号なし 32 ビット整数を表している。
                    343: % さらに、 $|f| = n$ が成り立たなければならない。
                    344: % このオブジェクトは
                    345: % \[ \mbox{sgn}(f) \times \{ b_0 (2^{32})^0 + b_1 (2^{32})^1 + \cdots
                    346: %      + b_{n-1} (2^{32})^{n-1} \}     \]
                    347: % という整数であると定義されている。
                    348: % ただし、
                    349: % \[ \mbox{sgn}(f) = \left\{ \begin{array}{ll}
                    350: %         1       & f>0 \\
                    351: %         0       & f=0 \\
                    352: %         -1      & f<0 \\ \end{array} \right. \]
                    353: % である。
                    354:
                    355: % ここで具体例をだそう。
                    356: % $4294967298 = 1 \times 2^{32} + 2$ を CMO 形式の
                    357: % ネットワークバイトオーダー、多倍長整数で表現すると、
                    358: % \begin{center}
                    359: %      {\tt 00 00 00 14 00 00 00 02 00 00 00 02 00 00 00 01}
                    360: % \end{center}
                    361: % となる。また、同じ表現方法で $-1$ を表現すると、
                    362: % \begin{center}
                    363: %      {\tt 00 00 00 14 ff ff ff ff 00 00 00 01}
                    364: % \end{center}
                    365: % となる。
1.4       tam       366:
1.1       tam       367:
1.50      ohara     368: \section{mathcap について}
1.30      ohara     369:
1.68      ohara     370: OpenXM 規約では、通信時に用いられるメッセージの種類を各ソフトウェアが制
                    371: 限する方法を用意している。これは各ソフトウェアの実装によってはすべてのメッ
                    372: セージをサポートするのが困難な場合があるからである。また、各ソフトウェア
                    373: でメッセージの種類を拡張したい場合にも有効である。この制限(あるいは拡張)
                    374: は mathcap と呼ばれるデータ構造によって行われる。この節では mathcap のデー
                    375: タ構造と、具体的なメッセージの制限の手続きについて説明する。
1.50      ohara     376:
1.73      ohara     377: では、手続きについて説明しよう。
                    378:
                    379: 第一にサーバの機能を制限するには次のようにする。クライアントが mathcap
                    380: オブジェクトをサーバへ送ると、サーバは受け取ったmathcap をスタックに積む。
                    381: 次にクライアントが命令 SM\_setMathCap を送ると、サーバはスタックの最上位
                    382: に積まれている mathcap オブジェクトを取り出し、mathcap で設定されていな
                    383: いメッセージをクライアントへ送らないように制限を行う。
                    384:
                    385: 第二にクライアントを制限するには次のようにする。クライアントがサーバに命
                    386: 令 SM\_mathcap を送ると、サーバは mathcap オブジェクトをスタックに積む。
                    387: さらに命令 SM\_popCMO を送ると、サーバはスタックの最上位のオブジェクト
                    388: (すなわち mathcap オブジェクト)をボディとするメッセージをクライアントに
                    389: 送付する。クライアントはそのオブジェクトを解析して、制限をかける。
1.50      ohara     390:
1.56      tam       391: 次に mathcap のデータ構造について説明する。
1.73      ohara     392: mathcap は CMO の一種であるので、すでに説明したように
                    393: \begin{verbatim}
                    394: ヘッダ     ボディ
                    395: \end{verbatim}
                    396: の構造を持ちヘッダの値は 5 である(\ref{sec:cmo} 節を参照のこと)。
                    397: ボディは cmo\_list オブジェクトでなければならない。
1.67      tam       398:
1.73      ohara     399: さて、mathcap オブジェクトのボディの cmo\_list オブジェクトは以下の条件を
                    400: 満たすことを要求される。
                    401:
                    402: まず、その cmo\_list オブジェクトは少なくともリスト長が 3 以上でなければ
                    403: ならない。
1.56      tam       404:
1.58      tam       405: \[     \begin{tabular}{|c|c|c|} \hline
                    406:        $A$ & $B$ & $C$ \\ \hline
                    407:        \end{tabular}   \]
1.56      tam       408:
1.73      ohara     409: 第一要素 $A$ はまた cmo\_list であり、リスト長は 4 以上、
1.56      tam       410: $a_1$ は 32 ビット整数でバージョンナンバーを、
                    411: $a_2$ は文字列でシステムの名前を表すことになっている。
                    412:
1.58      tam       413: \[     \begin{tabular}{|c|c|} \hline
                    414:        $a_1$ & $a_2$   \\ \hline
                    415:        \end{tabular}   \]
1.56      tam       416:
                    417: 2 番目の要素 $B$ の部分は次のようなリスト構造をしている。
                    418: この $b_1$, $b_2$, $\cdots$, $b_n$ はすべて 32 ビットの整数である。
1.57      tam       419: スタックマシンへの命令はすべて 32 ビットの整数で表しており、
                    420: 各 $b_i$ は利用可能な命令に対応する 32 ビットの整数となっている。
                    421:
1.58      tam       422: \[     \begin{tabular}{|c|c|c|c|} \hline
                    423:        $b_1$ & $b_2$ & $\cdots$ & $b_n$        \\ \hline
                    424:        \end{tabular}   \]
                    425:
1.57      tam       426: 3 番目の要素 $C$ は以下のようなリスト構造をしている。
1.58      tam       427: \[  \overbrace{
                    428:        \begin{tabular}{|c|c|c|c|} \hline
                    429:        $c_1$ & $c_2$ & $\cdots$ & $c_n$        \\ \hline
                    430:        \end{tabular}
                    431:    }^{C}       \]
                    432: %$n$ は OX\_COMMAND 以外の受け取れるメッセージのタグの種類の数に等しい。
                    433: %要素数は 1 でももちろん構わない。
1.59      tam       434: 各 $c_i$ もまた以下のようなリスト構造となっており、
                    435: どの $c_i$ も最初の要素が 32 ビットの整数となっている。
1.58      tam       436: \[  \overbrace{
1.59      tam       437:        \begin{tabular}{|c|c|c|c|c|} \hline
                    438:        $c_{i1}$ (32 ビットの整数) & $c_{i2}$ & $c_{i3}$ &
                    439:                $\cdots$ & $c_{im}$     \\ \hline
1.58      tam       440:        \end{tabular}
                    441:    }^{c_i}     \]
1.59      tam       442: このリストの最初の整数値は受け取れるメッセージのタグが入っている。
1.60      tam       443: $c_{i2}$ 以降については最初の $c_{i1}$ の値によってそれぞれ異なる。
1.58      tam       444: ここでは、最初の要素が OX\_DATA の場合についてのみ説明する。
1.60      tam       445: この $c_{i1}$ が OX\_DATA の場合、
                    446: リスト $c_i$ は CMO 形式についての情報を表しており、
1.65      tam       447: $m=2$ と決められている。
                    448: $c_{i1}$ にはもちろんのこと OX\_DATA が入っており、
                    449: $c_{i2}$ は以下の図のようなリスト構造になっている。
1.63      tam       450: 各要素は 32 ビットの整数であり、
                    451: 受け取ることが可能な CMO 形式のタグが入る。
1.59      tam       452: \[  \overbrace{
                    453:        \begin{tabular}{|c|c|c|c|c|} \hline
                    454:        $c_{i21}$ & $c_{i22}$ & $\cdots$ & $c_{i2l}$    \\ \hline
                    455:        \end{tabular}
                    456:    }^{c_{i2}}  \]
1.50      ohara     457:
1.63      tam       458: %なお、 mathcap データの中では CMO 形式で定義されている
                    459: %32 bit 整数、文字列、リスト構造が使われており、
                    460: %mathcap データに含まれている内容を理解できるためには
                    461: %必然的にこれらも理解できる必要がある
                    462: %(ってことは CMO 形式のところでこれらを
                    463: %説明しなければならないってことです)。
1.50      ohara     464:
1.65      tam       465: 具体的な mathcap の例をあげよう。
1.63      tam       466: %なお、 $a_1$, $a_2$, $\cdots$, $a_n$ を要素に
                    467: %持つリスト構造を {\tt [$a_1$, $a_2$, $\cdots$, $a_n$]} 、
                    468: %文字列 ``string'' を {\tt "string"} 、 32 bit 整数を
                    469: %それに対応する 10 進数の整数で示す。
1.73      ohara     470: 名前が ``ox\_test''、バージョンナンバーが 199911250 のサーバであれば、
1.63      tam       471: $A$ の部分は
                    472: \begin{tabular}{|c|c|} \hline
                    473: 199911250 & "ox\_test" \\ \hline
                    474: \end{tabular}
                    475: となる。
                    476: さらに、このサーバのスタックマシンが
1.65      tam       477: 命令コード 2, 3, 5, 7, 11 番を利用可能
                    478: (実際にはこのような命令コードは存在しない)であれば、 $B$ の部分は
1.63      tam       479: \begin{tabular}{|c|c|c|c|c|} \hline
                    480: 2 & 3 & 5 & 7 & 11 \\ \hline
1.65      tam       481: \end{tabular}
                    482: となり、
1.63      tam       483: CMO 形式の 32 ビット整数、文字列、 mathcap 、リスト構造のみが
                    484: 受け取れるときには、 $C$ の部分は
1.64      tam       485: \begin{tabular}{|c|} \hline
                    486:        \\[-5mm]
                    487:        \begin{tabular}{|c|c|} \hline
                    488:                & \\[-5mm]
                    489:                OX\_DATA &
                    490:                \begin{tabular}{|c|c|c|c|} \hline
                    491:                CMO\_INT32 & CMO\_STRING & CMO\_MATHCAP & CMO\_LIST \\ \hline
1.65      tam       492:                \end{tabular} \\[0.8mm] \hline
                    493:        \end{tabular} \\[1.4mm] \hline
1.67      tam       494: \end{tabular} \\
1.64      tam       495: となる。
1.70      ohara     496: CMO\_ZZ がないので、このサーバは多倍長整数が送られてこないことを期待して
                    497: いる。
1.31      tam       498:
1.70      ohara     499: なお、データが受け取れることと、データの論理構造が理解できることとはまっ
                    500: たく別物であるので注意する必要がある。
                    501:
                    502: {\Huge ってなんででしょうか? データの論理構造を知らないと受け取れないと
                    503: 思うんですが$\ldots$}
1.31      tam       504:
                    505:
                    506: \section{セキュリティ対策}
                    507:
1.70      ohara     508: OpenXM 規約は TCP/IP を用いて通信を行うことを考慮している。ネットワーク
                    509: によって接続される現代の多くのソフトウェアと同様、OpenXM 規約もまた通信
                    510: 時のセキュリティについて注意している。以下、このことについて説明しよう。
1.50      ohara     511:
                    512: {\large\bf 意味不明なことを書いているが、}
1.56      tam       513:
1.50      ohara     514: 侵入者に攻撃の機会をできるだけ与えないようするた
                    515: めに、接続が必要になった時のみ接続を待つようにし、
                    516: 常に接続に関与するといったことは避けている(やっぱり意味不明である)。
1.49      tam       517:
                    518: また、侵入者が接続を行なう一瞬のすきを狙ってくる可能性もあるので、
1.50      ohara     519: 接続を行なう時に接続を待つポート番号をランダムに決めている(誰が決めてい
                    520: るのかはやっぱり不明であるが)。
1.31      tam       521: さらにもう一段安全性を高めるために、
                    522: 接続時に 1 回だけ使用可能なパスワードを作成し、
1.50      ohara     523: そのパスワードを使って認証を行なう(誰がパスワードを決めて誰が認証を行っ
                    524: ているのかが不明だけど)。
1.31      tam       525: このパスワードは一旦使用されれば無効にするので、
1.49      tam       526: もし仮になんらかの手段でパスワードが洩れたとしても安全だと考えている。
1.31      tam       527:
                    528: なお、接続が確立した後のメッセージの送受信に関しては、
1.49      tam       529: 特に暗号化などの処置を行っているわけではない。
1.31      tam       530: もし必要があれば、通信路の暗号化を行なう機能がある
1.49      tam       531: ソフトウェア ssh を使うことを考えている。
1.31      tam       532:
                    533: \section{他のプロジェクト}
                    534:
                    535: 他のプロジェクトについても触れておこう。
                    536:
1.66      tam       537: \begin{itemize}
1.70      ohara     538: \item OpenMath\\
                    539: OpenMath プロジェクトは数学的なオブジェクトをコンピュータ上で表現する方
                    540: 法を規定している。各ソフトウェア間でオブジェクトを交換する際のオブジェク
                    541: トの変換手順につても定められている。表現方法は幾つかの段階で定められて
1.73      ohara     542: いて、XML 表現やバイナリ表現などが用意されている。詳細は
1.31      tam       543:
1.70      ohara     544: http://www.openmath.org/omsoc/   A.M.Cohen
1.31      tam       545:
1.66      tam       546: \item NetSolve
1.31      tam       547:
                    548: http://www.cs.utk.edu/netsolve/
                    549:
1.66      tam       550: \item MP
1.31      tam       551:
                    552: http://symbolicNet.mcs.kent.edu/SN/areas/protocols/mp.html
                    553:
1.66      tam       554: \item MCP
1.31      tam       555:
                    556: http://horse.mcs.kent.edu/~pwang/
1.66      tam       557: \end{itemize}
1.31      tam       558:
                    559:
                    560: \section{現在提供されているソフトウェア}
                    561:
1.70      ohara     562: 現在 OpenXM 規約に対応しているクライアントにはasir, sm1, Mathematica が
                    563: ある。これらのクライアントから OpenXM 規約に対応したサーバを呼び出すこと
                    564: ができる。現在 OpenXM 規約に対応しているサーバソフトウェアには、asir,
                    565: sm1, gnuplot, Mathematica などがあり、それぞれ ox\_asir, ox\_sm1,
                    566: ox\_sm1\_gnuplot, ox\_math という名前で提供されている。また、 OpenMath
                    567: 規約の XML 表現で表現されたオブジェクトと CMO 形式のオブジェクトを変換す
                    568: るソフトウェアが JAVA によって実装されており、OMproxy という名前で提供さ
                    569: れている。
1.33      tam       570:
1.50      ohara     571: \begin{thebibliography}{99}
1.66      tam       572: \bibitem{Ohara-Takayama-Noro-1999}
                    573: 小原功任, 高山信毅, 野呂正行:
                    574: {Open asir 入門}, 1999, 数式処理, Vol 7, No 2, 2--17. (ISBN4-87243-086-7, SEG 出版, Tokyo).
1.50      ohara     575: \bibitem{OpenXM-1999}
1.53      tam       576: 野呂正行, 高山信毅:
1.50      ohara     577: {Open XM の設計と実装 --- Open message eXchange protocol for Mathematics},
                    578: 1999/11/22
1.49      tam       579: \end{thebibliography}
1.1       tam       580:
                    581: \end{document}