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Annotation of OpenXM/src/ox_math/documents/ox_math.tex, Revision 1.3

1.1       ohara       1: %#!platex
1.3     ! ohara       2: %% $OpenXM: OpenXM/src/ox_math/documents/ox_math.tex,v 1.2 1999/11/02 06:12:00 ohara Exp $
1.1       ohara       3:
                      4: \documentclass{jarticle}
                      5: \title{Mathematica の Open XM 化について
                      6: % \\ {\small --- Open Mathematica サーバの内部構成 ---}
                      7: }
                      8: %\date{January 19, 1999}
                      9: \date{July 12, 1999}
                     10: \author{小原功任}
                     11:
                     12: \begin{document}
                     13: \maketitle
                     14:
                     15: \section{Open Mathematicaの構成}
                     16:
                     17: Open Mathmatica サーバはOpen XM クライアントおよびmathematica カーネルと
                     18: 通信する。Open Mathmatica サーバは起動直後にmathematica カーネルを起動し、
                     19: mathematica カーネルと協調して動作する。mathematica カーネルとは
                     20: MathLink ライブラリを利用して通信する。Open Mathmatica サーバはMathLink
                     21: のラッパだと思ってよい。Open XM クライアントとの間はソケットを利用して通
                     22: 信する。Open Mathmatica サーバはファイルディスクリプタ 3,4 が既にオープ
                     23: ンされていると思って, 3 から読み込み、4 に書き出す。
                     24:
                     25: さらに、Open Mathmatica サーバはコントロールプロセスからシグナルを受け取
                     26: る場合がある。シグナルを受け取った場合には,相応の動作が必要であるが、現
                     27: 在は実装していない.  SIGUSR1 (SM\_control\_reset\_connection) は計算が全
                     28: て終わってからOX\_SYNC\_BALL を投げるので、実際には意味がない。
                     29:
                     30: \section{OX スタックマシン}
                     31: スタックのオブジェクトは cmo 型の変数、あるいはその派生クラスである.
                     32: つまり、Open XM 規約で定められたデータ形式を流用している.
                     33: % cmo 構造体およびその派生クラスは/home/ohara/openxxx/lib/oxlib.h で定義さ
                     34: % れている.
1.2       ohara      35: この方法の利点は Open XM プロトコルを通して通信するにあたって
1.1       ohara      36: 特にデータの変換を必要としないことである.  すなわちCMO の各データタイプ
                     37: は Open Mathematicaサーバ(スタックマシン)の内部でも, CMO として保持する
                     38: わけである.
                     39:
                     40: サーバの各関数は cmo* を受け取り、タグをみて実際のクラスが何であるかを
                     41: 知り、動作を決定する.
                     42:
                     43: \section{Mathematica との通信(MathLink) について}
                     44:
                     45: CMO は 次のように変換されてから, MathLink を通して送られる.
                     46:
                     47: \begin{enumerate}
                     48: \item CMO\_INT32 は MLTKINT (多倍長整数型).
                     49: \item CMO\_STRING は MLTKSTR (文字列型).
                     50: \item その他のタイプの CMO は ToExpression[文字列] として送る.
                     51: \end{enumerate}
                     52:
                     53: 上で述べられている ToExpression は Mathematica の組み込み関数であり,
                     54: 文字列を引数として Mathematica の式を返す.
                     55: (\cite[pp.407]{Wolfram-1996})
                     56:
                     57: ここで一つ注意をしておく.
                     58: MathLink では, int 型以外のデータを MLTKINT として送ることは残念ながらで
                     59: きない.  したがって CMO\_ZZ を直接, 整数型であると Mathematica に思わせ
                     60: ることはできないのである.  そこで, 次のような方法をとることになる.
                     61:
                     62: \begin{verbatim}
                     63: char *CONVERT_ZZ_TO_CSTRING(cmo_t zz);
                     64:
                     65: int main()
                     66: {
                     67:   char *s;
                     68:   cmo_t zz;  /* zz.tag == CMO_ZZ */
                     69:   MLINK lp;  /* MathLink Socket */
                     70:   ...
                     71:   s = CONVERT_ZZ_TO_CSTRING(zz);
                     72:   MLPutFunction(lp, "ToExpression", 1);
                     73:   MLPutString(lp, s);
                     74:   ...
                     75: }
                     76: \end{verbatim}
                     77:
                     78: このようにすると, Mathematica 側では, 例えば
                     79: \[
                     80: \mbox{\tt ToExpression["1234567890"]}
                     81: \]
                     82: という評価が行われ, 文字列データから整数が復元される.
                     83:
                     84: 逆に, Mathematica から送られた整数データは,
                     85: マシン整数の範囲内であれば, int として
                     86: 取得可能(MLGetInteger を使う)であるが,
                     87: 受け取る前に int に収まるか否かを知ることはできない.
                     88: また, 直接 CMO\_ZZ として取得することも不可能である.
                     89: (MathLink 上でどのような形式でデータ交換されているのかの
                     90: 情報は手元にある資料からは得られなかった)
                     91:
                     92: しかしながら, たとえ Mathematica 側から整数データが送られていたとしても,
                     93: そのデータを文字列に変換して受け取ることは MathLink の機構上可能である.
                     94:
                     95: これを利用して, 我々は次のようにして整数を受け取る.
                     96: \begin{verbatim}
                     97: cmo_t CONVERT_CSTRING_TO_ZZ(char *s);
                     98:
                     99: int main()
                    100: {
                    101:   MLINK lp;
                    102:   char *s;
                    103:   cmo_t zz;
                    104:   ...
                    105:   if(MLGetNext(lp) == MLTHINT) {
                    106:     MLGetString(lp, &s);
                    107:     zz = CONVERT_CSTRING_TO_ZZ(s);  /* zz.tag == CMO_ZZ */
                    108:   }
                    109:   ...
                    110: }
                    111: \end{verbatim}
                    112:
                    113: つまり、Mathematica から整数データを文字列として受け取り、
                    114: その文字列を OX サーバ側で CMO\_ZZ に直している。
                    115:
                    116: 基本的に MathLink では全てのデータを文字列で受け取るしか方法はない。どの
                    117: ような種類のデータであるかは受け取る前に知ることはできる。データの型は、
                    118: MLTKERR(エラー), MLTKINT(整数), MLTKSTR(文字列), MLREAL(実数), MLTKSYM
                    119: (シンボル), MLTKFUNC(関数) のいずれかである。このような事情で
                    120: Mathematica から受け取ったデータは基本的に CMO\_STRINGとしてスタックに積
                    121: まれるので、クライアント側でその文字列の解釈をする必要がでてくる。
                    122:
                    123: しかしながら、全ての MathLink オブジェクトが文字列に変換できるわけではな
                    124: いので、その取り扱いには注意を要する。
                    125: まだ、実装していないが、多項式(CMO\_???\_PORINOMIAL)の扱いが難しい。
                    126:
                    127: \section{個々のスタックマシン命令の実装}
                    128: 現在、実装しているのは
                    129: SM\_popCMO, SM\_popString, SM\_pops, SM\_executeFunction,
                    130: SM\_executeStringByLocalParser, SM\_mathcap, SM\_setMathcap(受け取るだけ
                    131: で何もしない)である。
                    132:
                    133: \section{Mathematica を OX のクライアントに}
1.3     ! ohara     134: OpenXM クライアントは Mathematica の外部プログラム(math2ox)の形で
        !           135: 実現されている。
        !           136: すなわち、Mathematica -- math2ox の間は MathLink プロトコルで、
        !           137: math2ox -- OpenXM サーバの間は OpenXM プロトコルで通信し、
        !           138: math2ox が適切に情報を変換しながらやりとりする。
        !           139: その意味で wrapper の一種であるとも言える。
1.1       ohara     140:
1.3     ! ohara     141: 利用するには、最初に
1.1       ohara     142: \begin{verbatim}
                    143: In[1]:= Install["math2ox"]
                    144: \end{verbatim}
1.3     ! ohara     145: として、math2ox をロードしなければならない。
        !           146: Mathematica に新たに定義されるコマンドは、
        !           147: {\tt OxStart[s\_String], OxStartInsecure[s\_String],
        !           148: OxExecute[s\_String], OxParse[s\_String], OxReceive[],
        !           149: OxPopCMO[], OxPopString[], OxClose[], OxReset[]}
        !           150: の9つである。
1.1       ohara     151:
1.3     ! ohara     152: math2ox をロードしたら、
1.1       ohara     153: \begin{verbatim}
                    154: In[2] := OxStart["ox_sm1"]
                    155: \end{verbatim}
1.3     ! ohara     156: によって OpenXM サーバに接続する。この場合の接続先は ox\_sm1 である。
        !           157: もちろん
        !           158: \begin{verbatim}
        !           159: In[2] := OxStartInsecure["water.s.kanazawa-u.ac.jp", 1300, 1400]
        !           160: \end{verbatim}
        !           161: のようにして、insecure モードで接続してもよい。ただしこの場合は、
        !           162: あらかじめ {\tt Run[]} 等で、OpenXM サーバを起動しておかなければならない。
        !           163:
        !           164: 接続が成功したらデータを送ってみよう。
        !           165: \begin{verbatim}
        !           166: In[3] := OxParse["(CMO_LIST, (CMO_STRING, "hello world"), (CMO_ZERO))"]
        !           167: \end{verbatim}
        !           168: のように CMO expression を指定することによって、
        !           169: 任意の CMO を送信できる。
        !           170: 正しくない CMO の場合には、何も送信されない。
        !           171: また、CMO ではなく、
        !           172: \begin{verbatim}
        !           173: In[4] := OxParse["(OX_COMMAND, (SM_popCMO))"]
        !           174: \end{verbatim}
        !           175: などとして、OX メッセージの形で記述することもできる。
        !           176: 注意しなければならないのは、SM コマンドの場合、OX スタックマシンから
        !           177: OX メッセージが送られてくる場合があるが、OxParse[] を用いた場合、
        !           178: このメッセージは自動的には受信しない(現在の仕様では)。したがって明示的に
        !           179: 受信する必要がある。そのためには
        !           180: \begin{verbatim}
        !           181: In[5] := OxReceive[]
        !           182: \end{verbatim}
        !           183: とするだけでよい。返ってくるオブジェクトは CMO に対応するものである。
        !           184: \begin{verbatim}
        !           185: In[6] := OxPopCMO[]
        !           186: \end{verbatim}
        !           187: を用いる場合にはもちろん {\tt OxReceive[]} を呼び出す必要はない。
        !           188:
        !           189: 計算を実行するには {\tt OxExecute[]}
        !           190: (SM\_executeStringByLocalParser) か、適切な OX メッセージを送信すること。
1.1       ohara     191:
1.3     ! ohara     192: 計算が終わったら、
1.1       ohara     193: \begin{verbatim}
1.3     ! ohara     194: In[7] := OxClose[]
1.1       ohara     195: \end{verbatim}
                    196: とすると、接続が終了する。
                    197:
                    198: \appendix
                    199: \section{付録}
                    200:
                    201: GMP における ``整数型'' {\tt mpz\_t} はつぎのような
                    202: 内部表現を持つ: \\
                    203: まず  {\tt mpz\_t} 型は
                    204: \begin{verbatim}
                    205: typedef struct __mpz_struct mpz_t[1];
                    206: \end{verbatim}
                    207: と typedef されており,
                    208: {\tt mpz\_t} 型の変数は(関数の仮引数でない限り)配列の
                    209: 扱いである. また,
                    210: \begin{verbatim}
                    211: typedef unsigned long int mp_limb_t;
                    212: \end{verbatim}
                    213: と宣言されている場合には,
                    214: 変数 {\tt mpz\_t x} の {\tt x->\_mp\_d} が unsigned long int の
                    215: 配列であり, データの実体である.
                    216: これは整数の最下位4バイトが配列の先頭にくる.
                    217: つまり全体としては``リトルエンディアンっぽい''が,
                    218: 各 unsigned long int はマシンのネイティブな integer である.
                    219: つまり, GMP の内部表現はマシン依存となっている.
                    220:
                    221: \begin{thebibliography}{99}
                    222: \bibitem{Openxxx-1998}
                    223: 野呂正行, 高山信毅.
                    224: {Open xxx の設計と実装, xxx = asir,kan}, 1998/10/11
                    225: \bibitem{Ohara-Takayama-Noro-1999}
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