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\documentclass{jarticle}
\title{Mathematica の Open XM 化について
% \\ {\small --- Open Mathematica サーバの内部構成 ---}
}
%\date{January 19, 1999}
%\date{July 12, 1999}
\date{November 25, 1999}
\author{小原功任}

\begin{document}
\maketitle

\section{Open Mathematicaの構成}

Open Mathmatica サーバはOpen XM クライアントおよびmathematica カーネルと
通信する。Open Mathmatica サーバは起動直後にmathematica カーネルを起動し、
mathematica カーネルと協調して動作する。mathematica カーネルとは 
MathLink ライブラリを利用して通信する。Open Mathmatica サーバはMathLink 
のラッパだと思ってよい。Open XM クライアントとの間はソケットを利用して通
信する。Open Mathmatica サーバはファイルディスクリプタ 3,4 が既にオープ
ンされていると思って, 3 から読み込み、4 に書き出す。

さらに、Open Mathmatica サーバはコントロールプロセスからシグナルを受け取
る場合がある。シグナルを受け取った場合には,相応の動作が必要であるが、現
在は実装していない.  SIGUSR1 (SM\_control\_reset\_connection) は計算が全
て終わってからOX\_SYNC\_BALL を投げるので、実際には意味がない。

\section{OX スタックマシン}
スタックのオブジェクトは cmo 型の変数、あるいはその派生クラスである.
つまり、Open XM 規約で定められたデータ形式を流用している.
% cmo 構造体およびその派生クラスは/home/ohara/openxxx/lib/oxlib.h で定義さ
% れている.  
この方法の利点は Open XM プロトコルを通して通信するにあたって
特にデータの変換を必要としないことである.  すなわちCMO の各データタイプ
は Open Mathematicaサーバ(スタックマシン)の内部でも, CMO として保持する
わけである.

サーバの各関数は cmo* を受け取り、タグをみて実際のクラスが何であるかを
知り、動作を決定する.

\section{Mathematica との通信(MathLink) について}

CMO は 次のように変換されてから, MathLink を通して送られる.

\begin{enumerate}
\item CMO\_INT32 は MLTKINT (多倍長整数型).
\item CMO\_STRING は MLTKSTR (文字列型).
\item CMO\_LIST は MLTKFUNC (関数型).
\item その他のタイプの CMO は ToExpression[文字列] として送る.
\end{enumerate}

上で述べられている ToExpression は Mathematica の組み込み関数であり,
文字列を引数として Mathematica の式を返す.
(\cite[pp.407]{Wolfram-1996})

ここで一つ注意をしておく.
MathLink では, int 型以外のデータを MLTKINT として送ることは残念ながらで
きない.  したがって CMO\_ZZ を直接, 整数型であると Mathematica に思わせ
ることはできないのである.  そこで, 次のような方法をとることになる.

\begin{verbatim}
char *CONVERT_ZZ_TO_CSTRING(cmo_t zz);

int main()
{
  char *s;
  cmo_t zz;  /* zz.tag == CMO_ZZ */
  MLINK lp;  /* MathLink Socket */
  ...
  s = CONVERT_ZZ_TO_CSTRING(zz);
  MLPutFunction(lp, "ToExpression", 1);
  MLPutString(lp, s);
  ...
}
\end{verbatim}

このようにすると, Mathematica 側では, 例えば
\[
\mbox{\tt ToExpression["1234567890"]}
\]
という評価が行われ, 文字列データから整数が復元される.

逆に, Mathematica から送られた整数データは, マシン整数の範囲内であれば,
int として取得可能(MLGetInteger を使う)であるが, 受け取る前に int に収ま
るか否かを知ることはできない. int に収まらない場合、データが切り捨てられ
てしまうので注意が必要である.  また, 直接 CMO\_ZZ として取得することも不
可能である.  (MathLink 上でどのような形式でデータ交換されているのかの情
報は手元にある資料からは得られなかった)

しかしながら, たとえ Mathematica 側から整数データが送られていたとしても,
そのデータを文字列に変換して受け取ることは MathLink の機構上可能である.

これを利用して, 我々は次のようにして整数を受け取る.
\begin{verbatim}
cmo_t CONVERT_CSTRING_TO_ZZ(char *s);

int main()
{
  MLINK lp;
  char *s;
  cmo_t zz;
  ...
  if(MLGetNext(lp) == MLTHINT) {
    MLGetString(lp, &s);
    zz = CONVERT_CSTRING_TO_ZZ(s);  /* zz.tag == CMO_ZZ */
  }
  ...
}		
\end{verbatim}

つまり、Mathematica から整数データを文字列として受け取り、その文字列を 
OX サーバ側で CMO\_ZZ に直している。

基本的に MathLink では全てのデータを文字列で受け取るしか方法はない。どの
ような種類のデータであるかは受け取る前に知ることはできる。データの型は、
MLTKERR(エラー), MLTKINT(整数), MLTKSTR(文字列), MLREAL(実数), MLTKSYM
(シンボル), MLTKFUNC(関数) のいずれかである。このような事情で 
Mathematica から受け取ったデータは基本的に CMO\_STRINGとしてスタックに積
まれるので、クライアント側でその文字列の解釈をする必要がでてくる。

しかしながら、全ての MathLink オブジェクトが文字列に変換できるわけではな
いので、その取り扱いには注意を要する。
まだ、実装していないが、多項式(CMO\_???\_PORINOMIAL)の扱いが難しい。

\section{個々のスタックマシン命令の実装}
現在、実装しているのは
SM\_popCMO, SM\_popString, SM\_pops, SM\_executeFunction,
SM\_executeStringByLocalParser, SM\_mathcap, SM\_setMathcap(受け取るだけ
で何もしない)である。

\section{Mathematica を OX のクライアントに}
OpenXM クライアントは Mathematica の外部プログラム(math2ox)の形で
実現されている。
すなわち、Mathematica -- math2ox の間は MathLink プロトコルで、
math2ox -- OpenXM サーバの間は OpenXM プロトコルで通信し、
math2ox が適切に情報を変換しながらやりとりする。
その意味で wrapper の一種であるとも言える。

利用するには、最初に
\begin{verbatim}
In[1]:= Install["math2ox"]
\end{verbatim}
として、math2ox をロードしなければならない。
Mathematica に新たに定義されるコマンドは、
{\tt OxStart[s\_String], OxStartInsecure[s\_String],
OxExecute[s\_String], OxParse[s\_String], OxReceive[],
OxPopCMO[], OxPopString[], OxClose[], OxReset[]}
の9つである。

math2ox をロードしたら、
\begin{verbatim}
In[2] := OxStart["ox_sm1"]
\end{verbatim}
によって OpenXM サーバに接続する。この場合の接続先は ox\_sm1 である。
もちろん 
\begin{verbatim}
In[2] := OxStartInsecure["water.s.kanazawa-u.ac.jp", 1300, 1400]
\end{verbatim}
のようにして、insecure モードで接続してもよい。ただしこの場合は、
あらかじめ {\tt Run[]} 等で、OpenXM サーバを起動しておかなければならない。

接続が成功したらデータを送ってみよう。
\begin{verbatim}
In[3] := OxParse["(CMO_LIST, (CMO_STRING, "hello world"), (CMO_ZERO))"]
\end{verbatim}
のように CMO expression を指定することによって、
任意の CMO を送信できる。
正しくない CMO の場合には、何も送信されない。
また、CMO ではなく、
\begin{verbatim}
In[4] := OxParse["(OX_COMMAND, (SM_popCMO))"]
\end{verbatim}
などとして、OX メッセージの形で記述することもできる。
注意しなければならないのは、SM コマンドの場合、OX スタックマシンから
OX メッセージが送られてくる場合があるが、OxParse[] を用いた場合、
このメッセージは自動的には受信しない(現在の仕様では)。したがって明示的に
受信する必要がある。そのためには
\begin{verbatim}
In[5] := OxReceive[]
\end{verbatim}
とするだけでよい。返ってくるオブジェクトは CMO に対応するものである。
\begin{verbatim}
In[6] := OxPopCMO[]
\end{verbatim}
を用いる場合にはもちろん {\tt OxReceive[]} を呼び出す必要はない。

計算を実行するには {\tt OxExecute[]}
(SM\_executeStringByLocalParser) か、適切な OX メッセージを送信すること。

計算が終わったら、
\begin{verbatim}
In[7] := OxClose[]
\end{verbatim}
とすると、接続が終了する。

\appendix
\section{付録}

GMP における ``整数型'' {\tt mpz\_t} はつぎのような
内部表現を持つ: \\
まず  {\tt mpz\_t} 型は
\begin{verbatim}
typedef struct __mpz_struct mpz_t[1];
\end{verbatim}
と typedef されており, 
{\tt mpz\_t} 型の変数は(関数の仮引数でない限り)配列の
扱いである. また, 
\begin{verbatim}
typedef unsigned long int mp_limb_t;		
\end{verbatim}
と宣言されている場合には,
変数 {\tt mpz\_t x} の {\tt x->\_mp\_d} が unsigned long int の
配列であり, データの実体である.
これは整数の最下位4バイトが配列の先頭にくる.
つまり全体としては``リトルエンディアンっぽい''が, 
各 unsigned long int はマシンのネイティブな integer である.
つまり, GMP の内部表現はマシン依存となっている.

\begin{thebibliography}{99}
\bibitem{Openxxx-1998}
野呂正行, 高山信毅.
{Open XM の設計と実装 --- Open message eXchange protocol for Mathematics},
1999/11/22
\bibitem{Ohara-Takayama-Noro-1999}
小原功任, 高山信毅, 野呂正行.
{Open asir 入門}, 1999, 数式処理, Vol 7, No 2, 2--17. (ISBN4-87243-086-7, SEG 出版, Tokyo).
\bibitem{Wolfram-1992}
ウルフラム.
{Mathematica (日本語版)},
アジソンウエスレイ, 1992.
\bibitem{Wolfram-1996}
Stephen Wolfram.
{The Mathematica Book}, Third edition,
Wolfram Media/Cambridge University Press, 1996.

\bibitem{miyachi-1998}
宮地力.
{Mathematica によるネットワークプログラミング},
岩波コンピュータサイエンス,
岩波書店, 1998.
\end{thebibliography}

\end{document}